2024年自民党総裁選挙
選択的夫婦別姓賛否アンケート
一般社団法人あすには では、候補者9名に選択的夫婦別姓制度に関するアンケートをお送りいたしました。
9月19日時点で5名の候補者よりご回答をいただきましたので、本ページにて公開いたします(残る4名からも引き続きご回答をお待ちしております)
また、末尾では各候補者の回答について衛藤幹子・法政大学名誉教授(政治学博士)のコメントもいただきました。
高市 早苗 議員
問1:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を衆議院選挙の自民党公約に掲げますか?
いいえ
問2:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を推進しますか?
進めない
問3:制度化を求める当事者から生の声を聞く勉強会を設けるご意向はありますか?
どちらともいえない
問4:選択的夫婦別姓について、党議拘束を外し、国民に開かれた場で議論すべきだとお考えはありますか?
いいえ
問5:選択的夫婦別姓についてのご自身のお考えをお聞かせください
首相就任時に旧姓を通称使用できる措置を国や地方公共団体、公私の団体、事業者に義務付ける「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」を政府提出法案として国会に提出致します。この法案が成立すれば、結婚で姓が変わることによる不便はほぼ無くなるものと考えます。その際には、党議拘束を外した上で、国会における審議に臨むこともあり得るものと考えます。
小泉 進次郎 議員
問1:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を衆議院選挙の自民党公約に掲げますか?
はい
問2:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を推進しますか?
進める
問3:制度化を求める当事者から生の声を聞く勉強会を設けるご意向はありますか?
十分に
問4:選択的夫婦別姓について、党議拘束を外し、国民に開かれた場で議論すべきだとお考えはありますか?
はい
問5:選択的夫婦別姓についてのご自身のお考えをお聞かせください
公約の一つとして「選択的夫婦別姓制度の導入」を掲げた。一人一人の人生の選択肢を広げることが、今後の日本の発展のためにも必要だと考えているためだ。
国民の多様な価値観、生き方が広がっている中、苦しむ人達がいる。自分自身の経験からも、姓が違うことは必ずしも家族の崩壊につながるとは考えていない。党としても決断すべきだと考えている。
上川 陽子 議員
問1:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を衆議院選挙の自民党公約に掲げますか?
無回答
問2:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を推進しますか?
無回答
問3:制度化を求める当事者から生の声を聞く勉強会を設けるご意向はありますか?
無回答
問4:選択的夫婦別姓について、党議拘束を外し、国民に開かれた場で議論すべきだとお考えはありますか?
無回答
問5:選択的夫婦別姓についてのご自身のお考えをお聞かせください
95%の女性が結婚時に改姓し、様々な困難に直面しています。私自身、結婚で名字を変えた時は、アイデンティティーの喪失を感じました。賛成する方々の「当事者の気持ち」がとてもよく分かります。 私は、かつて賛成の立場で党内の議論に参加して、激しい対立に直面しました。賛成反対が厳しく対立する中で無理に決めると、分断が生まれると危惧しています。本当の決着とは、国民のご理解とコンセンサスを得て結論を導くことだと考えています。当事者の一人として、皆様のご理解、コンセンサスを得るため、丁寧に対話を進めていきます。総理になったら、政府内に有識者検討会を設け、意見交換してまいります。
河野 太郎 議員
問1:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を衆議院選挙の自民党公約に掲げますか?
はい
問2:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を推進しますか?
進める
問3:制度化を求める当事者から生の声を聞く勉強会を設けるご意向はありますか?
ある
問4:選択的夫婦別姓について、党議拘束を外し、国民に開かれた場で議論すべきだとお考えはありますか?
はい
問5:選択的夫婦別姓についてのご自身のお考えをお聞かせください
様々な支障を感じておられる方がいらっしゃる以上、政治はそこに対応すべきであり、希望される場合には夫婦別氏を選択できるようにすべきと考える。
石破 茂 議員
問1:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を衆議院選挙の自民党公約に掲げますか?
回答なし(追加記載:選択的夫婦別姓の導入については、基本的には賛成であるが、党内で真摯な議論をさらに進めてコンセンサスを作る努力をすべきと考える。)
問2:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を推進しますか?
回答なし(追加記載:まずは党内で真摯な議論をさらに進めてコンセンサスを作る努力をすべきと考える。)
問3:制度化を求める当事者から生の声を聞く勉強会を設けるご意向はありますか?
どちらともいえない(追加記載:必要に応じて、様々なお立場の方のお声も真摯に承りたいと考えている。)
問4:選択的夫婦別姓について、党議拘束を外し、国民に開かれた場で議論すべきだとお考えはありますか?
回答なし(追加記載: まずは党内で真摯な議論をさらに進めてコンセンサスを作る努力をすべきと考える。)
問5:選択的夫婦別姓についてのご自身のお考えをお聞かせください
選択的夫婦別姓の導入については、基本的には賛成であるが、党内で真摯な議論をさらに進めてコンセンサスを作る努力をすべきと考える。
総括
衛藤先生よりコメント
自民党総裁アンケート
高市早苗、小泉進次郎、上川愛子、河野太郎の4氏のご回答に対するコメント
安倍元首相の後継者とも言われ、今や保守派のリーダーである高市早苗氏の反対は想定通りである。同氏は、通称使用の拡大と法的保証によって改姓の不利益を解消する内容の「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案(以下、通称使用法案)」を国会に提出する予定だという。しかし、この案は諸問題の解決には不十分なばかりか、却って問題を複雑にする危険性もある。
「通称使用法案」、何が問題なのか。まず、通称名(旧姓)を戸籍名と同等の地位に引き上げたとしても、氏の二重性は依然残る。国内ならまだしも、海外で2つの「姓」を使い分ける(たとえば、事業活動の契約では通称、プライベートな口座開設や住居の賃貸では戸籍名を使用するなど)ということが果たして認められるのか、という点である。スパイかマネーロンダリングに手を染める犯罪者と間違えられたり、金融犯罪に巻き込まれたりなんてことはないのか、心配である。国際私法や国際契約法等の専門家のご意見を伺ってみたい。
夫婦別姓を何とか阻止しようと苦肉の策で提案された節のあるこの法案、ほかにもいろいろ穴がありそうだ。運用の中で現実との乖離や齟齬など様ざまな不具合が生じるかもしれない。すると、修正や追加などが繰り返され、まるで安普請の家の修繕のように益々歪な制度になる。そして、やはり選択的夫婦別姓が良いということになると、厄介なお荷物である。私には、将来に禍根を残すような案にしかみえない。
しかも、通称使用では、改姓に伴う「アイデンティティ(存在証明)」の損傷という問題は依然解決しないのである。子どもが生まれると何をおいても名前をつける。ペットを飼うときも然り。また、見ず知らずの人であっても、お互いに名乗り、相手の名前を覚えると、大勢の人の中でも、他ならぬその人を見つけ出す(identify)ことができる。つまり、名前は個人の存在証明であり、人と社会を結ぶ「結節点」である。数十年の歴史の積み重ねを刻む名前は、その人の全人格と一体化し、決して切り離すことができないアイデンティティのコアとも言えるものだ。従って、通称使用で事足りると考えるのは、人の尊厳を無視した、底の浅い短絡的な考えである。
上川陽子氏が選択的夫婦別姓に賛成する理由として、このアイデンティティの問題を挙げていたが、他の議員から聞いたことのない観点であっただけに、新鮮さを感じた。賛成の議員は、もっぱら不便さや不利益といった実利面から選択的夫婦別姓の導入を求める傾向にあり、こうした内面的な問題は蔑ろにされがちなだけに貴重な発言である。もっとも、導入には、国民的コンセンサスが欠かせず、「丁寧に対話を進めていく」としており、慎重な姿勢もみせる。
賛成の立場である石破茂氏も同様に「党内で真摯な議論を進めてコンセンサスを作る」こととしている。党内政治を考慮して、慎重な態度を取るのはベテラン議員の重みであろうか。ところで、数年前、石破氏にインタビューをしたことがある。ジェンダー問題がテーマで、正直なところ、どのような展開になるのか不安になり、ガチガチに緊張して面談に臨んだ。ところが、同氏はにこやかで、とてもフレンドリー、緊張は直ちに解れた。しかも、ジェンダー問題に造詣が深く、考え方も進歩的で、頷くことばかりであった。石破氏といえば、「外交、防衛、安全保障」が思い浮かぶが、いえいえ実はジェンダーや女性問題にも理解がある。
1990年代末から2000年代前半、「ジェンダー・バッシング」なるものが吹き荒れ、自民党政治においてジェンダーは禁句扱いをされた。しかし、今日ジェンダーは人口に膾炙し、ジェンダー平等や多様性が社会的に共有され始めており、自民党の議員さえ使うようになった。所謂「伝統的な家族」観を頑なに守り続けたい政治家や団体には、「冬の時代」(?)である(メンバーも高齢化し、人数も減少傾向にあるらしい)。夫婦同姓はかれらの最後の砦、是が非でも死守したいイデオロギーなのかもしれない。つまり、「夫婦同姓」は旧弊な自民党の象徴の一つなのである。その点において、「自民党を変える」をスローガンに掲げる小泉進次郎氏が、導入を公約の一つに掲げたのは正しい。
河野太郎氏も改革派らしく、希望者が別姓を選択できるように「政治は対応すべき」と言い切っている。河野氏は21年の総裁選挙でも賛成の立場であった。
「たかが苗字、もっと大事な議論がある」とこの問題を軽視する論調もあるが、それはとんでもない勘違いである。この問題は、自民党にとっては「新しい自民党」に生まれ変われるかという党の今後の「 レーゾンデートル(raison d'être、存在意義) 」を問う課題であり、国民にとっては「生活の質」の向上にかかわる問題である。
衛藤先生プロフィール
政治学博士(スットクホルム大学政治学部より学位取得)。
法政大学名誉教授/未来工学研究所シニア研究員。
専門はジェンダー政治学で、女性の議会進出、クオータ制度、市民社会と民主主義などの研究に取り組み、最近の主著にWomen and Political Inequality in Japan: Gender-Imbalanced Democracy (2021, Routledge)、『政治学の批判的構想-ジェンダーからの接近』(2017年、法政大学出版局)がある。
アンケート内容
各候補にお送りしたアンケートの全文は以下の通りです。
問1:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を衆議院選挙の自民党公約の一つに掲げますか?(該当に○)
はい いいえ
問2:総裁になられたら、選択的夫婦別姓の法制化を進めますか?(該当に○)
進める 進めない
問3:選択的夫婦別姓の制度化を求める当事者から生の声を聞くための会合の場(勉強会や意見聴取など)を設けるご意向はありますか?(該当に○)
ある どちらともいえない ない
問4:2009年臓器移植臓器移植法改正では、賛否を議員個々人の判断にゆだねるため、党議拘束が外されました。自民党内で賛否が割れ続けた場合、選択的夫婦別姓についても党議拘束を外した上で1996年法制審議会答申に基づく民法改正案を国会上程し、国民に開かれた場で議論すべきと考えますか?(該当に○)
はい いいえ
問5:選択的夫婦別姓についてのご自身のお考えをお聞かせください(自由記述)
なお、一般社団法人あすには の前身であり現在法人のチームとして活動を継続している「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」では、前回2021年の自民党総裁選においても候補者に同様のアンケートを行いました。
その際の回答はこちらにて公開しています。
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